歌詞の紹介

歌詞の紹介

《宇治茶/宇治は茶所》

《宇治茶/宇治は茶所》本調子

〽宇治は 茶所さまざまに 中に噂の大吉山と 人の気に合ふ水に合ふ 色も香も良い 濡れた同士(どし) 粋な浮世に 野暮らしい こちゃこちゃ濃茶の 仲じゃいな

京都府宇治の名産 宇治茶 を題材に、茶処ならではの風雅と男女の艶(いろ)を重ね合わせた戯れ唄。

冒頭の 「宇治は茶所さまざまに」 は「宇治といえば何よりお茶」という定番の呼び込み。続く「中に噂の大吉山」 は宇治橋の南岸にそびえる**大吉山(だいきちやま)**のこと。山頂には展望台があり、春は桜・秋は紅葉、眼下には宇治川と平等院鳳凰堂――まさに“うわさの”絶景ポイントです。

「人の気に合ふ 水に合ふ 色も香も良い」宇治茶が名高い理由は、
1. 軟水の宇治川が茶葉の旨味を引き出す
2. 谷あいにかかる川霧が適度な遮光となり色鮮やかな緑を保つ
3. 香り高い品種と伝統製法により芳香が際立つ
という“三拍子”に尽きます。歌ではその優秀さを「人・水・色・香が合う」と重ね言葉で讃えています。

「濡れた同士 」文字どおり雨に降られて“びしょ濡れになった二人”と取ると同時に、**お茶=湯に“濡れる”**ことへの言葉遊び。恋人同士が同じ茶碗で茶をたて合う姿にも重なります。

「粋な浮世に 野暮らしい」茶の湯という高尚な遊芸(粋)と、庶民の色恋沙汰(野暮)を対比し、照れ隠しの笑いを誘う洒落。

「こちゃこちゃ濃茶の仲じゃいな」“こちゃこちゃ”は「ごちゃごちゃ」「こちゃこちゃしとるわ」の京ことば的砕け表現かと。**“濃茶(こいちゃ)の仲”**は“とても濃い仲=深い仲”の言い換えで、濃茶の粘度・濃密さを恋の深まりに例えているのでしょう。