歌詞の紹介

《梅暦辰巳園(うめごよみたつみのその)》
《梅暦辰巳園》本調子
明治3年3月中村座 河竹其水作詞/初代哥澤芝金作曲
〽神垣に 植し園女(そのめ)の 山桜合 代わらぬ花に 古へを合 思へば八重の 咲く頃は 重ね袷に 江戸妻の 目立つ模様の 染め色も合 深川鼠 辰巳ふう
〽作らぬ花の 投げ入れに合 木咲のままの とりなりは合 油気薄き 洗ひ髪合 顔へ かかりし 青柳の 鬢のほつれも 誰と寝し合 口舌の 果てと よそ目には 浦山吹や あだな草
〽芽出し紅葉の 色にでて合 浮名の たちし 岡惚れに合 思ひ佃の 送り船 網手のばちに 白魚の 首尾も四つ手の 遠篝(とおかがり)
〽火影を 厭ふ 簾越し合 芝浦 霞む 春の夜の合 月も朧に 帆柱の合 海へうつりて ばらばらと 雲あし 早く雨となり合 また立帰る 潮頭 新地のはなを横折れて 色に 血道を あげみなみ
〽客で逢ひしも 昨日今日 真のはなしに 間夫となり合 浮気を捨てし仲町に 座敷もひけて しっぽりと
〽小雨の音に 春ながら合 弥生 鰹に 遅れじと 更けてひと声 時鳥合 あれといふ間も 明け近く 八幡鐘の後朝に合 別れて後の 物思ひ合 涙に 重き目のふちも 夕べの 酒に紛らして合 州崎へ帰る 雁が音の合 文の通ひ路合 繁き恋仲
[第3編16丁オ]
園女:比喩的表現としての「女性」。庭園や自然の一部として女性を調和的に描くことで、繊細で優美な情景を表現
深川鼠:富岡八幡宮を中心とし、深川界隈で好まれたのがこの深川鼠の色「粋な色」。意気とおとこぎが売り物の辰巳芸者が活躍していました。