歌詞の紹介

《綱は上意/綱上》
《綱は上意/綱上》 本調子→三下り
〽入りにけり 綱は上意をかうむりて 羅生門にぞ 着きにける合 折しも雨風激しき後ろより 兜の錣を引掴み ひき戻さんと ヱイ とひく 綱も聞こえし強者にて かの曲者に 諸手をかけ
〽よしゃれはなしゃれ錣が切れる 錣 切れるは大事もないが たった今 結ふた 鬢の毛が 損じるは 損じるは 七ツ過ぎには ゆかねば ならぬ そこへ行かんすりゃ こちゃ気にかかる たれじゃ たれじゃ 鬼じゃないもの 人じゃもの 兜も錣もなっちもいらね サッサ もってけしょってけ
能・浄瑠璃・歌舞伎で確立した“羅生門鬼退治”の王道をなぞったあと、鬼を**「髪形を気にする女」**へ転倒させて一気に滑稽味へ落とす構成。序段:本調子+大薩摩風は、低音を歯切れ良くはじき、雨風の荒ぶる羅生門を絵巻化。三下りに転調して、語り手が女声に替わる瞬間、テンポが跳ねて洒落ごとが、、、
恐怖⇔滑稽、男⇔女、武士道⇔浮世というコントラストを短い歌詞の中で往復させる粋曲。
後半部を“芸者(遊女)のぼやき”と読むか“化け女鬼の正体露見”と読むか――その曖昧さこそが江戸幕末の遊び心であり、聴くたびに羅生門の闇と京の色香が交差する。
錣: 兜の後ろに垂れる頚覆い。「切れるは大事もないが…」と大武具を軽く扱うギャップ。
鬢の毛が損じる:女姿の鬼(または遊女)が髪形の乱れを嘆く——勇壮⇔艶美の転換スイッチ。
七つ過ぎ:昼夜を四刻で割った不定時法の「七つ」(午後4時頃ないし午前4時頃)。花街では客の引き時を示す俗時刻。
用語 意味とギャグ
錣(しころ) 兜の後ろに垂れる頚覆い。「切れるは大事もないが…」と大武具を軽く扱うギャップ。
鬢の毛が損じる 女姿の鬼(または遊女)が髪形の乱れを嘆く——勇壮⇔艶美の転換スイッチ。
七つ過ぎ 昼夜を四刻で割った不定時法の「七つ」(午後4時頃)。花街では客の引き時を示す俗時刻。
なっちも:江戸弁で「何にも」。「兜も錣もなっちもいらね」=捨て台詞。